新・ 太陽の愛月の愛 2015/9/30加筆修正

ここに呪われしあるいは祝福されし少女がいる。その名をイザベラという――

 

「フィー兄さんの代わりに薬草をとってくるわ。マリー姉さん」

 ほほにかかる縦巻髪をうっとおしげに振り払って少女イザベラは言った。年は17.。はしばみ色のロングヘアーに瑠璃色の瞳をもった活発な少女だ。まだ顔にあどけなさが残る。

「気をつけるのよ」

 マリーが今にもかけだしそうな勢いのイザベラに声をかける。

「今度は腹下しの薬草とってくるなよ」

 同じくフィーが声をかける。この小さな家では姉のマリーが騎士を務めフィーが薬剤師をして生計をたてていた。今日は街まで二人が買い物に行く予定だった。

「じゃいってきま〜す」

 イザベラは意気揚々と家を出た。その後に地獄を味わうことも知らずに。

 

「兄さん!。姉さん!」

 

 滝つぼに向かって叫んでも答えは返ってこなかった。目撃者によると馬が急にあばれて馬車が滝つぼに落ちたという。深い滝つぼに入るものもなく死体さえ上がらない。涙をあふれさせて泣いているイザベラの肩をたたく者がいた。

「お嬢さん。この事故のからくりを知りたくはありませんか?」

 そう甘い誘惑の話を持ってきた青年はいきなりイザベラの身分を確かめた。

「たしかマリーさんの妹さんですね?」

「あ。はい・・・」

 不審げにイザベラが青年を見ていると青年ブリトニーは口を開いた。

「実はマリーさんたちは魔物に倒されたといううわさが立っているのをご存知ですか?」

「魔物・・・? どうしてそれを・・・」

 イザベラには初耳だった。

「僕は高名な魔術師ではないですがその手の情報を集めるのは得意なんです」

「どうして魔物が罪もないマリー姉さんとフィー兄さんを」

「さぁ?」

「さぁって・・・」

 返事にあっけにとられているとブリトニーはさらにとんでもないことを提案してきた。

「その魔物を倒す旅にでませんか?」

「そう言われてうんといいたいけど私には報酬を支払うお金がないわ」

「あなたは騎士の心得があるとか。魔物を倒す資格があります。心配なら勇者を募ってはどうですか? 報酬は山分けということで。募集も回覧板などで回したらひっかかる人がいそうですよ」

「そうかしら?」

「疑うならやってみては?」

 何もしないよりはましだ。一か八か勝負に出よう。イザベラは決心すると家へ駆けだした。

「まぁ。元気なお嬢さんだこと」

 ブリトニーはゆっくりと反対の道を歩き出した。

 村に戻るとイザベラは村長に回覧板を借ることにした。ブリトニーは宿屋に戻ったのかついてはこなかった。それよりも一日も早く旅に出たかった。

「村長さん。隣村まで回してもいいですか?」

 書き込みを村長は納得した顔でうむとうなずいた。

「どうせなら近隣全村に回そう。わしもフィーの薬には大いに助かったからな。同じ思いのものもいるじゃろう」

「ありがとうございます」

 イザベラは回覧板を持って駆け出して行った。

 三日ほど経つといらいらと人の気配を待つようになった。

玄関のドアをたたく音を聞きつけるとイザベラは家の中にもかかわらず走ってドアをあけた。

「はい!」

「あの。回覧板見たんだけど」

「なんだ。ヴァンか」

 いっきに力が抜ける。

「なんだはないだろう。応募してきたんだから」

「へたれ剣士に用はないわ」

「へたれとはなんだ。これでも昔はぴーぴーついてきた癖に」

 ヴァンは同じ村に住む三つ上の青年だ。いつか騎士になりたいとマリーに稽古をつけてもらっていた。

「わ・た・し・は御前試合に出れるような有能な剣士を探してるの!」

「それは無理だ。この近辺にそんな奴がいたらマリーが騎士団にいれてるはずだ」

「それはそうだけど・・・」

 それは認めざるを得ない。マリーは目利きでもあった。

「俺なら多少は役に立つ。報酬いらないし」

「ほんと?」

 無償はありがたい。ごくわずかな生計だったため貯金はない。

「昔馴染みってことでね・・・」

「オオカミにならないでしょうね」

「なるわけないだろう。子供相手に」

「子供とは失礼でしょう。もう17よ」

「子供は子供だ」

「まぁまぁよろしいじゃないですか。騎士に剣士に魔術師とくれば冒険は始められます」

「ブリトニー。いつからそこに」

「おや。気付かれませんでしたか? 先程から口論なさってましたしね」

 イザベラのほほが赤く染まる。

「それでは明日村の入り口ではどうですか?」

「え? はい」

「じゃ僕はこの辺で」

 いきなりあらわれて旅の手順をてきぱき決められてイザベラはいささか混乱した。ヴァンもだ。

「まぁ。そういうことらしいから明日」

「うん」

 イザベラは答える。ありがとうといいかかけてやめた。幼馴染にいうには恥ずかしかったからだ。一人になるとイザベラはイスに座り方針気味に姉の形見の剣を手に取った。明日からはこれが相棒だ。

「待っててね。マリー姉さん。フィー兄さん」

こうして三人はあてどない旅に出ることになった。

待ち合わせの場所に三人が集まった。いよいよ旅の始まりだ。魔物を倒す。未知の世界だ。イザベラは身震いした。

「おや? 怖いですか?」

普段はのほほんとしてる割には突っ込むブリトニーである。

「では行きましょうか」

のんびりとした気分で三人は村を出て行った。

歩くこと四日。

街に入り魔物狩りの賞金張り紙などから仕事を探してみた。案の定近くに魔物が人を襲う事例があるようだ。

詳しいことを聞いた彼女らは魔物の巣窟と言われる場所に三人はいた。

「ひょえ〜。イザベラタッチ」

一目散にヴァンが逃げ出す。

「こんなの雑魚じゃないの」

今や形見となったマリーの剣で魔物を一刀両断していく。

ブリトニーも多少なりとは魔術を操って倒していく。何もしてないのはヴァンだけだ。

「勇者の名前が聞いてあきれるわよ」

「はじめての経験値上げにこんなとこ来るなよ〜」

ようやくヴァンが剣を据える。

「おりゃ〜」

掛け声だけで切らない。あきれてものも言えない。

あっという間に魔物たちは一掃された。

魔物の血液を振り払っているイザベラをヴァンはじっと見つめる。

「怖くないのか?」

「怖いわよ。私だって。でもそうしないとマリー姉さんやフィー兄さんのことがわからないんだからばつのわるそうなヴァンである。ヴァンは思切ってイザベラに頼み込んだ。

「すまん。悪かった。俺に剣を教えてくれ。一日でも早くへたれじゃない勇者になってみんなを守りたい」

土下座までしてヴァンは頼み込む。

「絶対勇者になる」

真剣なまなざしにどきりとしながらもイザベラはその真摯な心に惹かれた。

しばらく考える様子を見せた後イザベラは言った。

「いいわよ。ただし怪我の一つや二つはあるわよ」

「わかってる。男の俺が一番情けないことして反省してる」

「わかった。よろしく」

「おう。じゃない。はい。師匠」

「師匠はやめてよ。乙女なんだから」

「さっきの猛女ぶりみたら誰だって腰抜かすぜ」

いつしか立ち上がっていたヴァンとイザベラは握手していた。

「それではしばらく街に逗留して稽古にはげみましょうか」

仕切り役のブリトニーが言う。

「あなたは魔術の腕を磨いてほしいわね」

「痛い言葉ですね。私は情報収集のプロです。魔術師は仮の姿ですよ」

「よく言うわよ」

三人は近くにある街の宿に泊まり魔物掃討の賞金で過ごしていた。

イザベラは手を抜かなかった。容赦なくヴァンの打ち込んでくる剣を跳ね返す。

「うりゃ〜」

「まだまだ」

毎日擦り傷と土まみれのヴァン。だがその間にイザベラとヴァンの間にあったいくつかの壁が取り除かれていっていた。気心の知れた仲間としていつしか同等の立場で話すようになっていた。ヴァンは優しい。不器用な優しさがイザベラのマリーたちを失った喪失感を埋めて行ってくれた。そんな毎日に明け暮れたいたころ賞金が底をついた。

また魔物を倒す旅に出ないといけない。

見慣れた風景ともさよなら。

「いい具合に筋肉がついたじゃない」

旅を始めたころとは違ってヴァンはいつしか男らしい体になっていた。あとは剣の力の開花だ。いいところまではいっている。素質はそれなりにあったようだ。

イザベラもそんなヴァンが頼もしく見えていた。ブリトニーも認めている。

「あとはヴァンの開花ですねぇ。待ち遠しいですね」

機嫌よくブリトニーが言う。そうね、とイザベラもいうがあまりいい表情ではない。

体がついてきても素質があろうともまだその片鱗がないヴァンは危なっかしかった。

自分自身を守るのに必死なイザベラとしてはヴァンのフォローをどうしようか頭を悩ませていた。小物の魔物退治に路線変更したイザベラだった。少しでもヴァンの力を開花させる猶予をもたせたかった。だが番狂わせが起きた。小物の魔物と思って入った森には魔王並みの魔物がすんでいた。

「ここは私が食い止めるからみんなは早く外へ!」

イザベラが指示しブリトニーは森を出る。だが命令を聞かなかったヴァンがいた。

「危ないわよ。死ぬつもり?」

イザベラはイライラと言葉を投げる。隙ができた。

魔物の爪が振り落される。イザベラは瞬間的に瞼を閉じた。

ガシン!!

金属音が響いた。

魔物の爪はヴァンの剣で防がれていた。

「ヴァン!!」

魔物とヴァンの力が拮抗する。

魔物との戦いはイザベラからヴァンへと移動していた。

まだ覚えたての剣で挑んでいく。

「イザベラ。逃げろ。こいつは俺がやる」

「無理よ!!」

「いいから!」

ザシュ。

集中力が切れたヴァンの腕に爪が突き刺さる。

「ヴァン!」

「いいから。イザベラは外へ行け!! でないとかっこ付かないだろうが!!」

ヴァンの剣が魔物に突き刺さる。イザベラは動けなかった。ヴァン一人残したら死んでしまうような気がしたからだ。

「二手に分かれて攻撃するわ。ヴァンは右から。私は左から行くわ」

強引に決めてイザベラは動く。二人なら倒せるかもしれない。

案の定、弱い女と見たイザベラに魔物の視線が首付けになる。そこへヴァンが一気に剣を突き立てた。断末魔の声が響く。何度これを繰り返しただろうか。いつしか洞窟の中の魔物は一掃されていた。

「やったな。い・・ざべ・・ら」

そういってヴァンは倒れた。魔物に刺された時毒が回ったのだろうか。戻ってきていたブリトニーと一緒にイザベラはヴァンを宿へ運んだ。宿で医者に診てもらうと少しでも遅かったら危ないところだったと言われた。イザベラは片翼がもがれた気がして気が気でなかった。必死に看病する。四日ぐらいたったころイザベラの頭にそっと触るヴァンの手があった。

「よかった。もう少しで死ぬところだったのよ。もうあんな危ないことはやめて」

「俺はイザベラを守りたかったんだ。いつも全部しょってるからさ」

「もう。ヴァンなんて嫌い」

ヴァンの胸元に抱きつくと顔を押し当てる。

「だけど好き」

言葉が落ちた。いつしかただの幼馴染はイザベラにとって失いたくない存在になっていた。

「俺も」

「え? 今なんて」

「だから俺もって。ちょっと人の肩を揺さぶるな、痛いって!!」

「本当? 本当に?」

「ああ。男に二言はねぇ」

「ヴァン!!」

「だからいてーっていうの」

ヴァンが何を言おうが今更ながら心が通じ合ってイザベラは泣いた。ほっとして泣いた。

 

その後も魔物倒しの旅は続いた。しかしどこから魔物がでるかはまったくわからなかった。足跡は必ず消す。しだいにイザベラの顔には憂いの表情が彩るようになった。

「どうしたらいいの・・・?」

 助かっていると言えるのはこの旅でヴァンは才能を開花させ勇者といわれるほどの剣士に育ったことだ。イザベラの腕も格段に上がった。ブリトニーは相変わらずへたれのままだったが。しかしブレーン役には向いていた。

「イザベラ。疲れたなら疲れたといっていいんだ。一人で抱え込むのはイザベラの悪い癖だ」

 今や三年の旅で恋人となったヴァンがイザベラを慰める。恋人の言葉はうれしいが事実進まないのも現実だ。甘えている場合ではない。

「そういえば」

「そういえばって?」

憂いた表情のままイザベラは自動的にオウム返しにする。

「魔坑路というものがあるらしいですよ。人間界に通じる次元のひずみとでもいう道でしょうか」

「そこから魔物が出ているというの?」

「かもしれません。その剣は時空剣ですね?」

「なぜそれを・・・」

「私も確証は得ませんがその柄ににある宝玉は力をため時空を切り裂くそうですね」

「マリー姉さんは小さなころにそう話してくれたけど確証は私にもないわ」

「一度切ってみてはいかがですか」

「漸るだけじゃ今までと同じじゃない」

「やり方が違うかもな」

 ヴァンが指摘する。

「そうです。その宝玉に力を集める必要があるのです」

 全精力をこの剣にこめる。自分自身はよいがこの子は・・・。

 ヴァンと恋人同士になって将来を誓い合う仲になるとあとは自然の摂理に従ってイザベラはヴァンの子を宿していた。この子を殺すのは・・・。

 身を切るような選択だった。しかしイザベラは母子健康かもしれないという賭けにかけてみた。

「やるわ」

 すっと立ち上がるとイザベラは剣を構えた。力の集め方は依然魔術の試験をしたときにブリトニーに教わっている。素質がないとのことで魔術はあきらめたが。

 イザベラの膨大な力が集約されていく。宝玉がまばゆい光を放つ。

「はっ!」

 気合とともにイザベラは時空を縦に切り落とした。そこに大きく筋が生じた。

「今のうちです!」

 ブリトニーの声に信じられないような顔をしていたイザベラとヴァンはその空間にそろりと足を踏み入れた。ひやり、とした冷気を感じる。

「進めるようね」

上下左右わからないような空間は進めるようだった。何分たったのかあるいは一秒の間なのかわからないうちに大広間に三人はいた。奥に王座がある。そこに一人の男が座っている。

「よく来た娘よ・・・」

 低い地に染みいるような声が響いた。

「魔王なの?」

 魔王というにはあまりにも人間すぎた。今まで戦ってきたものとは違う。

 戸惑いながらもイザベラは言う。

「あなたを殺しにやってきました。フィー兄さんとマリー姉さんを殺したのはあなたの指示ね」

「私はだれも殺すように指示していない。ラファエルとミカエルの殺害などしていない。あれは天使が仕組んだ事故だ。二人を天使界に取り戻すため二人を殺したのだ。だがちょうどよい。娘に殺されれば魔王のイスを明け渡すのにちょうどよい。もう疲れた。私は」

「天使? 娘? でもブリトニーは」

「信頼を得ているようだなロット。冥界の参謀がついてくるとは意外だった」

「冥界? ブリトニー? だましたの?」

「いえ。私は最善の手をうつため一緒に旅をしただけです。ここに来るのにあなた方の力では三年必要だったのですよ」

「それに私を娘と」

「娘よ。それは正しい。呪われれし魔王と祝福されし大天使ミカエルとの娘だ。マリーは仮の名前。お前が言うフィーはおそらくラファエルだろう。お前が私の胸を一突きさえすればことはすむ」

「私が魔王に・・・。ではこの子も魔物になるの?」

 涙でうるませて震える声でイザベラはいう。

 ヴァンが反射的にイザベラに反応する。

「子? 俺とイザベラの子なのか?」

 ええ、とイザベラがうなずく。

「私が魔王の血を引いているなんて。なによりもこの子が魔王の子なんて。できない。私にはこの子を地獄に落とせない」

『わたしがするわ』

不意に頭上で声がした。

「マリー姉さん。いえお母さん!」

『やめるんだ。ミカエル』

「フィー兄さん!!」

イザベラの声とフィーの声が大きく響いた。

二人がイザベラの前にいた。死んだはずなのに・・・。

『一緒にとめてくれ。ミカエルはまた罪を犯そうとしている』

「罪?」

『魔王を愛する罪だ。もとより天使は愛してはならない』

フィーが補足する。

『この人は私のもの。誰のものにもならないわ。魂を浄化すればきっと天使界か人間界で暮らせる。この人のためなら堕天使にも魔物にもなるわ』

マリーいやミカエルの瞳は狂気的な光がやどっていた。なにも見えてないらしい。娘のイザベラすら・・・。あの明るい元気なマリーではなかった。愛ゆえにどこまでも堕ちていく堕天使。

「お母さんが魔王を連れ去ったら私が次の魔王? このままではこの子が・・・」

「それには及びません」

 ブリトニーいやロットが言う。

「人間界、魔界、冥界に明確な線引きをしましょう。それなら魔物が人間界に現れることはないでしょう。魔王亡きあとはしばらく冥界が管理し、また魔王の資質をもった人間の出現を待ちましょう」

「もともとそれを狙っていたのだろう。冥界の拡大のために。ずるがしこい奴だ」

 魔王がため息をつく。そして頭上のミカエルにうなずく。

『あなた。今助けてあげる』

 ミカエルはイザベラが持っていた剣をいつの間にか持っていた。そのまま切っ先を胸にあてる。

「お母さん!」

 あっという間だった。ミカエルの手で貫かれ魔王はこときれた。

「イザベラさん。もう一つの秘密です。あなたは「神の人」ガブリエルとしても生きることができます。ミカエルと一緒に天使界に戻りますか?いえ、ラファエルとともにですね。ミカエルはまた罪の泉に堕ちましたね。残念ながらも」

「お母さんが来ることを知っていたの? またお母さんがこの道を通じてやってきて罪を犯すことを」

「いえ。ラファエルが来ると思っていました。ミカエルの先手を打って。あなたはどうするんです? 天使界に戻りますか?」

「いえ。私はかなうならば人間界でこの子とヴァンと三人で暮らしたいわ。元の村で。マリー姉さんは愛ゆえに堕ちてしまったけど私は明るい未来を歩く愛を生きたい」

「そうですか。お母さんから素敵なプレゼントですよ。時空剣です。これでまた時空を切って外に出られます」

「ありがとう。これを形見としてもっていくわ。ブリトニーありがとう」

「ロットと呼ばないのですね」

「私たちの知っているへたれ魔術師はブリトニーしかいないわ。いつかこの子が困ったらまた助けてあげて」

「わかりました。大きな契約実現にこじつけたのもあなたのおかげですからね。またいつの日か・・・」

「またね」

「またな」

 イザベラとヴァンはそういうと大広間を出た。出たところは夜の草原だった。

「ここはどこ?」

「そういや地図と磁石はブリトニーがもっていたんだっけ」

 あちゃーとヴァンが顔をしかめる。

「ヴァン。見て。向こうが明るいわ」

「身体は大丈夫か?」

「ええ。行きましょう」

「ああ」

 二人は手をつなぐとしっかりとした足取りで街に向かっていった。愛の果てに二つの愛。進む愛と堕ちていく愛。それはまるで太陽と月のようだった。


この作品は天野龍哉氏作成イザベラのパラレルコラボレーションです。著作権は綾瀬と天野氏にあります。天野氏とは現在連絡不通。